がんサバイバーシップ:不眠症と睡眠障害

がんサバイバーシップ:不眠症と睡眠障害

From: PiNK SPRING 2017 p.16-p.17 (オンライン雑誌はこちらをクリック)

BY BARRIE CASSILETH, MS, PHD

がん患者の多くは、寝つきが悪い、頻繁に夢遊する、目が覚めるのが早朝すぎる、1日中寝すぎてしまうなど、睡眠に関わる問題を抱えています。このような症状は、70%以上のがん患者に起きると言われています。がんの診断によるストレスや不安、治療の副作用など、その他さまざまな要素が原因となります。

さらに、きちんと睡眠が取れないことで、疲労感や気分の浮き沈みといった、ほかの症状の要因ともなるのです。睡眠トラブルを改善するための薬は多く、即効性があり、効き目も大きいのですが、依存性などの副作用も指摘されています。

一方、リラクゼーションや太極拳などの代替療法は、身につけるのに時間はかかるものの、長期的に睡眠の質が改善されるでしょう。がん患者だけを対象にした不眠症や睡眠障害に対する代替療法についての研究は少ないのですが、一般的な睡眠障害と代替療法についての研究で、とりわけマインド・ボディアプローチは、がん患者にとってもメリットがあると言えるのではないでしょうか。

マインド・ボディセラピーで睡眠問題に取り組む

ストレスや不安など、メンタル要因が睡眠に与える影響を考えると、マインド・ボディセラピーが役立つということも驚くことではないでしょう。 59の異なる研究から抽出したデータを分析したところ、心理療法を平均5時間行うことで入眠時間を短縮し、睡眠時間を長くする効果があることがわかりました。さらに、その効果が少なくとも6カ月間持続したということです。これらの効果は、ほかの研究でも裏付けされています。

アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)のコンセンサスパネルは、特にリラクゼーションとバイオフィードバック(生体自己制御)などの補足的療法が睡眠の改善に一定の効果があると結論づけています。とはいえ、どれほど改善するかについてはやや不透明です。

ゆっくりとした動きをする瞑想的なエクササイズである太極拳も睡眠障害に効果があるようです。中程度の睡眠障害を抱えた年齢の高い成人を対象にした小規模な無作為化試験において、16週間にわたる太極拳のレッスン、または全般的な健康についての講習のいずれかを受けてもらいました。太極拳を行った人たちは、講習を受けた人たちと比較して、睡眠の質が大きく改善されました。その中でも、特に睡眠効率と睡眠時間の改善が顕著でした。

一般的に、マインド・ ボディセラピーは費用があまりかからず、薬やその他従来の治療法と併用することができる上、初めにやり方を習得すれば自分で行うことができ、副作用もなく、安全なために色々ながんに対して魅力的なアプローチであると言えます。

エクササイズで睡眠問題に取り組む

身体を動かすことは、疲労感の軽減、身体的健康の促進、がん再発リスクの低減に貢献するのに加え、睡眠の改善にも効果があることがわかっています。台湾で行われたある臨床試験では、自宅で8週間のウォーキングプログラムを行うことでがん患者の睡眠の質が大きく改善されたと報告されています。加えて、エクササイズをした患者は痛みが軽減したり、QOL(生活の質)が向上したそうです。

放射線治療を受けている乳がん患者や前立腺がん患者を対象にした臨床試験でも、同じような結果が報告されています。4週間にわたるエクササイズプログラムを自宅で行なった患者は、エクササイズをしなかった患者よりも睡眠の改善がみられ、ホルモン療法を受けている乳がん患者を対象にした別の臨床試験では、20分間のウォーキングを週に4日行った女性は、開始後4週間足らずで睡眠の質が改善したことが報告されています。

適度な運動が、睡眠に好影響を与えるとの結果が出ている研究は、次々と報告されています。さまざまな症状に対するエクササイズの効果はよく知られていますし、その効果を裏付ける研究結果もあります。ジョギング、水泳、そしてガーデニングですら、病状が許す限り身体を動かすことでそのメリットを享受することができるはずです。



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