06 4月 考え方が大切 〜心の健康を保つために〜
PiNK 2020 Winter Issue
乳がんの診断を受けた人は強いストレスにさらされ、不安を感じやすくなります。しかし心の健康を保つために自分でできることもあります。ロージー・ビックが解説します。
アリス=メイ・パーキスは大人になってから、不安や抑うつを感じながら暮らしてきました。ところが、乳がんの診断を受けて、自身の心の健康をいっさい顧みなくなってしまいました。
「乳がんの治療を受けていた期間はパニック状態になってしまって、自分が考えていることを気にする余裕なんてありませんでした」とアリスは言います。
「がんと向き合うのに手一杯でした。がんに関係することばかり考えていたので、脳がさまざまな症状を訴えてきても、気付くことができませんでした」
「緊急避難モードに入っていました」
乳がんの診断を受けたあとで不安を感じる人は多くいます。「ブレスト・キャンサー・ケア」とメンタルヘルス支援団体「マインド」による2018年の共同研究によると、乳がんの診断や治療を受けたあとで、3分の1の女性が人生で初めて不安症状を経験したと答えています。
治療を受けて退院したあとで、新しい状況になかなか馴染めない人もいます。副作用が収まらないことで経過観察のために通院しなければならなかったり、また痛みが出たらどうしようと心配したりと、こうしたことが患者さんの心の健康に影響を及ぼします。
セルフヘルプ
心の健康を保ち改善するために活用できるセルフヘルプの方法があります。定期的に運動すること、特に有酸素運動はメンタルヘルスに良い効果があります。運動をすると脳内に化学変化が起きると言われており、良い方向に気分を変えてくれます。
大事なのは、自分が楽しんでできるエクササイズを見つけることです。アリスにとって、それは寒水スイミングとヨガでした。
定期的な運動に慣れていない人は、毎日軽い散歩に出かけるところからはじめて、自分のために時間を使うようにしましょう。
リラクゼーションとマインドフルネスも役に立ちます。マインドフルネスは「今」という時間を大切にすることにつながります。つまり、今この瞬間の自分の考えや気持ち、周囲の世界にもっと目を向けるということです。
また、無料アプリをつかって、リラックスしたり、眠りの質を良くしたり、不安症状を和らげたりするのを促進することもできます。
不安の引き金を見つける
ストレスと不安症状に対処できるよう自身で取り組んでいくにあたって、何が原因となって症状が起きるのか、自覚しておくことも大事です。
日記を付けて毎日の気持ちの変化を記録することで、原因を突き止めることができる場合もあります。
アリスは『人生、レモンとメロン』という本を書き、自分のメンタルヘルスと乳がんについて語ることで心が落ち着きました。「この本を書いたのは、乳がんやメンタルヘルスで苦しんだ体験を声高に語るためではありません。このような体験を余儀なくされている人が、自分は孤独だと思い込まなくても済むようにするためです」とアリスは言います。
支援を求めるとき
負の感情に対処するのにセルフヘルプは大いに役立ちますが、誰かの支援が必要な状況だと自覚できることも大切です。
「人は皆、調子の悪い日や休みたい日がありますが、それによって生活や人間関係、仕事に支障が出てくると問題です。沈んだ気持ちや不安が2週間以上続くようなら、かかりつけの医師や乳がん専門ナース、メンタルヘルス支援団体の人に相談してみてください」とアリスは言います。
乳がんの診断を受ける前、アリスは認知行動療法(CBT)という治療を受けていました。不安や抑うつに対処するために行う対話療法の一種です。乳がんの治療後、アリスはこの治療を再開しました。
CBTは患者の考え方と行動に変化を起こすことを重要視しており、さまざまな問題に対処する順応法を教えます。
アリスは、乳がんの治療後、複数の療法を組み合わせたものが効果を発揮したと言います。
「心の健康を保つのに、各種のカウンセリング、CBT、マインドフルネスに基づくメンタルヘルス支援プログラムなど、多くの支援や治療を頼りました 」とアリスは言います。
対話療法が良さそうだとお考えの方は、受診の方法についてかかりつけの医師や乳がん専門ナースに相談してみてください。