がんと仕事のQ&A がんサバイバーの就労体験に学ぶ

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PiNK 2020 Summer Issue

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がんと仕事のQ&A

がんサバイバーの就労体験に学ぶ

お金と健康保険

Q1:

療養中ですが退職することになりました。現在は健康保険と厚生年金保険に加入していますが、退職後の社会保険はどのようになるのでしょうか?また、退職後に傷病手当金の支給を受けることはできるのでしょうか?

正社員・非正規雇用者

A1:

退職前に会社の人事・労務部署に相談してみましょう。

●年金 

退職した時に60歳未満であれば、厚生年金を抜けて国民年金に加入しなければなりません。

●健康保険

退職前に2ヶ月以上継続勤務していた場合、社会保険は、任意継続被保険者として健康保険を継続することが可能です。継続の場合は、以前の健康保険組合の給付を最大2年間利用することが出来ます。ただし、任意継続被保険者の申請は退職してから20日以内に手続きをする必要があります。
任意継続の手続きをしない(またはできない)場合は、市町村の国民健康保険に加入するか、またはご家族の被扶養者として健康保険に加入することになります。

●傷病手当金

職場を退職する日から1年さかのぼってその会社の健康保険制度に加入し、退職日以前から傷病手当金を給付していた場合、傷病手当金等の継続給付を受給できる場合があります。会社の人事担当部門や健康保険組合に確認してみましょう。

Q2:

入院による減収に加えて、治療費がかさんで会計が苦しくなりました。家計を支える制度にはどんなものがありますか。

正社員・非正規雇用者・自営業者・求職者

A2:

●高額療養費制度

所得に応じて、一定限度額以上の医療費が免除される制度があります。医療機関や薬局の窓口で支払った金額が同じ月(月の初めから終わりまで)で一定限度額(自己負担額)を超えた場合に、その超えた金額が払い戻されます。払い戻される金額は、年齢や所得によって決まります。入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。治療を受けるご本人が同居親族の扶養家族になっている場合は、扶養者が高額療養費の申請をする必要があります。

自己負担額以上の医療費の払い戻しまでには少なくとも3ヶ月程度かかるため、あとから払い戻されるとはいえ、一時的な負担はかかります。70歳未満の方(70歳以上の一部の方を含む)であれば、「限度額適用認定証」という書類を取得して支払い窓口で提示すれば、入院外来の両方の治療費の支払いを自己負担額内ですませることができます。この制度を利用するには事前申請と認定が必要になりますので、受給の手続きなどは、勤務先の人事労務担当者や、加入している健康保険の事務所に確認してください。国民健康保険の方は、自治体の保険窓口で手続きできます。

●医療費控除

確定申告を行って医療費(交通費や装具などを含む)を申告すれば、所得控除を受けることができます。治療に関連してどこまでの費用が医療費控除の対象になるかは、国税庁の「タックスアンサー」(端末参照)などで確認してください。

●傷病手当金制度

健康保険に加入している場合は、傷病手当金制度が使えます。連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった場合、4日目から標準報酬日額※の2/3が1年6ヶ月までの間支給されます。相談先は以下の通りです。

※ 原則として、支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額を平均した額の30分の1

【健康保険の場合】 勤務先の人事労務担当者や、加入している健康保険組合にご確認ください。
【国民健康保険の場合】 加入している国民健康保険組合や自治体の窓口にご確認ください。加入している組合や自治体によっては傷病手当金制度があります(無い場合もあります)。

Q3:

治療費が高すぎて、支払えなくなりそうです。患者が治療費を借りられるような制度はないでしょうか。

正社員・非正規雇用者・自営業者・求職者

A3:

高額療養費の貸付制度というものがあります。この制度についての手続きは勤務先の人事労務担当者へご確認ください。

国民健康保険に加入の場合も、各自治体によって高額療養費制度の貸付制度や、受任払い制度などが利用できる場合もあります。受任払い制度とは、医療機関への支払いが困難な方に対し、国民健康保険から直接医療機関へ支払うことにより、申請者の一時的な金銭負担を軽減するための制度です。詳細はお住まいの自治体の国民健康保険の窓口にお問い合わせください。

Q4:

健康保険の高額療養費が支払われませんでした。どこに相談や確認をすればいいでしょうか。

正社員・非正規雇用者・自営業者・求職者

A4:

健康保険の窓口で確認をしてください。手続きのタイミングで支払いに時間差が生じる場合があります。
また、ご自身が1ヶ月に支払った治療費の合計金額を確認してみてください。高額療養費の計算法上、複数の病院で診察を受けて治療費を支払っている場合は、高額療養費制度の対象になる額に到達しない場合もあります。このとき、各病院で21,000円以上(70歳未満の方の場合)の支払いがあれば、自己負担額を1ヶ月単位で合算することができます。

高額療養費の計算では入院時の食費負担や差額ベッド代は含まれません。また計算期間は同じ月(月の初めから月の終わりまで)となります。

高額療養費が支給されず、その理由や根拠に納得がいかない場合は、不服申し立て(審査請求)をすることもできます。

Q5:

収入がなく、保険料の支払いが困難です。国民健康保険の保険料が減額・免除される制度はありませんか。

自営業者・求職者

A5:

平成22年度から、一定の理由に該当する人を対象に国民健康保険料を軽減する制度がスタートしています。軽減を受けるには申請が必要です。制度詳しい説明は、市町村の国民健康保険担当に問い合わせてください。また、低所得者への軽減制度や減免制度は、市町村によっては、一定の基準を満たせば対応してくれるところもあるので、詳細はお住まいの市町村の国民健康保険担当窓口に問い合わせてください。

Q6:

自営業のため、休職中の経済保障がありません。自営業が伝える経済支援制度はありませんか。

自営業者

A6:

自営業の方の多くが加入する国民健康保険は、傷病手当金について任意給付制度をとっていますので、自治体によって出る場合と出ない場合があります。加入地域の国民健康保険担当部署にご確認ください。また、職種別の国民健康保険組合に加入している方は、その国民健康保険組合にご確認ください。確定申告時の医療費控除制度を利用するとよいでしょう。

市町村の経済や商工会議所などで、独自に緊急融資制度や借入金返済救済制度をもつ場合もあるので、担当窓口へ問い合わせてください。

Q7:

パートタイムで働いています。休職中は無給になるうえ治療費がかかり不安です。傷病手当金のような保障制度はありますか。

非正規雇用者

A7:

パートタイム労働者の方が親族の扶養家族になっている場合、傷病手当て金は支給されません。しかし、ご自分の給与から健康保険料が差引されている場合は傷病手当金を受給することができます。国民健康保険に加入している場合、傷病手当金は任意給付制度をとっていますので、自治体によって出る場合と出ない場合があります。加入地域の健康保険担当部署にご確認ください。また、職種別の国民健康保険組合に加入している方は、その国民健康保険組合にご確認ください。確定申告時の医療費控除制度も利用するとよいでしょう。

Q8:

勤務時間が短いため、雇用保険の基本手当の受給資格がありません。再就職して生活を立て直すまでの生活費を支援する制度はありますか。

非正規雇用者・求職者

A8:

雇用保険の受給資格がなくても、一定の要件を満たす方に対しては、さまざまな支援制度があります。

●求職者支援制度:雇用保険を受給できない求職者の方(ただし世帯収入や世帯資産が一定額を超える者を除く)が、「職業訓練受講給付金」を受給しながら、職業訓練によるスキルアップを通じて早期就職を目指す制度。申込等の窓口はハローワーク。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/ kyushokusha_shien/index.html

●総合支援資金貸付:失業等により日常生活全般に困難を抱えている方を対象として、生活の立て直しや経済的自立等を図ることを目的とした制度。社会福祉協議会とハローワークによる支援を受けながら、社会福祉協議会から、賃貸住宅入居時の敷金・礼金等のための資金や、生活を支援するための敷金などの貸付を受けることができるもの。申込等の窓口はお住まいの市町村の社会福祉協議会。

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201001/3.html

●臨時特例つなぎ資金貸付制度:離職などに伴って住居を喪失し、その後の生活維持が困難である方が、総合生活資金貸付・住宅手当・生活保護等を申請してから支給されるまでの間の、当座の生活費の貸付を受けることができる制度。申込等の窓口はお住まいの市町村の社会福祉協議会。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/ tsunagishikin/index.html

【コラム】働くことは「原動力」でした

3週毎の抗がん剤治療中は身体がつらかったので、堂々と休みたい〜という心境になることもありました。正社員の方に「もっと休みなさい」と言われましたが、根本的にパートと正社員では立場が違います。正社員は堂々と休めるけれどもパートはわずかな有給休暇の他は休んだらお給料が減るだけです。時には「何でこうまでして働かなくちゃいけないか」と思ったこともありました。でも、やはり、人の輪の中にいて、頼られ、必要とされることは自分にとって良かったと思います。やらなければならないことが目の前にある。家族関係と似ているかもしれないです。「自分が頑張らなくちゃ」と思うことが励みにもなります。「仕事しなきゃ」という気持ちや職場に出ようとする頑張りが、結果的に自分を突き動かす原動力になったような気がします。

<女性 診断時53歳 乳がん パート>



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